性感染症について

STDってどんな病気?

STDってどんな病気?

STD(性感染症)は、性行為などによって感染する病気のことです。
以前は「性病」と呼ばれていましたが、現在は法改正により、
「性感染症」や「STD(「Sexually Transmitted Diseases」の頭文字)」
または「STI(「Sexually Transmitted Infections」の頭文字)」
という名称で呼ばれるようになりました。

自分のために、そしてかけがえのないパートナーのために、STDに
ついて正しい知識をもちましょう。

主な性感染症(STD)

●性器クラミジア感染症

男女ともに最も多いSTDです。クラミジアによる感染症は、男性では尿道にかゆみを覚えたり、軽い排尿痛などを伴う尿道炎などがみられます。
女性では70%以上の人が無症状で、感染したことに気づかずに放置されがちですが、子宮頸管炎(子宮の入口の炎症)を起こします。
感染が卵管や卵巣、腹膜などに及ぶと軽い下腹部痛、性交痛などがみられます。これらは不妊症や子宮外妊娠の原因になることがあります。
まれに感染が上腹部まで広がり、激しい腹痛を起こして救急外来へ搬送されることがあります。
また、最近ではオーラルセックスの増加により、のど(咽頭)への感染も増えています。

●淋病(りんびょう)

子宮頸管炎(子宮の入口の炎症)が多く、黄色い膿のようなおりものが出たりしますが、無症状のことが少なくありません。感染が拡大して骨盤内に炎症を起こすと、半数以上に発熱、下腹部痛がみられます。また、治療せずに放置しておくと不妊症の原因になることがあります。
なお、妊婦が感染していると、産道感染により新生児が結膜炎を起こすことがあります。
クラミジア感染症と同様にオーラルセックスによるのど(咽頭)への感染も増えています。
男性の感染も重篤で、クラミジア感染症と同様に尿道炎、排尿痛と膿の排出がみられますが、クラミジアより強い症状が出ます。

●梅毒

かつての感染症であるイメージが強いですが、近年国内で増加しており、注意が必要です。
皮ふや粘膜の小さな傷から、トレポネーマという病原菌が侵入することで発症する性感染症です。
第1期は感染部位に赤くて硬いしこりができ、やがて腫瘍となります。痛みはなく約2~3週間で消えますが、治ったわけではなく第2期へ移行します。
第2期になると病原体が全身に広がり、全身に赤みや発疹があらわれます。このほか倦怠感や発熱、リンパ節の腫れなどの風邪のような全身症状もでてきます。病期が進むと重い障害もみられますが、第3期、第4期の梅毒は現在では稀です。早期に発見して治療すれば、完全に治すことができます。

妊婦さんが梅毒に感染している場合、お腹の赤ちゃんが先天性梅毒にかかる可能性がありますので、妊娠初期に検査が行われ、感染が分かった場合には妊娠中も治療が必要です。

●性器ヘルペス

単純ヘルペスウイルス(HSV)による感染症で、ヘルペスの病変部と接触することにより発症する性感染症です。
一度感染してしまうと、症状が改善しても生涯繰り返し再発することがあります。
男女ともに初感染(初めての感染)は、感染後2~10日の間に発症、外陰部に複数の浅い潰瘍や水ぶくれができ、強い痛み、かゆみ、発熱を伴います。
再発は心身の疲労、性行為、月経などが誘引となり、外陰部、臀部、肛門周囲などに浅い潰瘍が繰り返し生じます。また、母子感染することもあります。

妊娠中に性器ヘルペスになっても奇形児が生まれることはほとんどないようです。ただ、お産のとき産道にいるヘルペスウイルスに胎児が感染して、新生児ヘルペスになってしまうと、新生児は抵抗力がなく重症になってしまうこともあるので注意が必要です。
もし、お産のときに、ヘルペスができていたら帝王切開で分娩したほうが安全です。

●尖圭コンジローム

尖圭コンジロームは、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の一種による性感染症です。
性器や肛門のまわりにイボ(腫瘍)が単発または多発し、徐々に増え、くっつく事で巨大なカリフラワー状になることもあります。
自覚症状がない場合が多いのですが、性器にかゆみや痛みを感じることもあるようです。母子感染の危険性もあり、出産前の治療が必要となります。
通常は良性型のウイルスの感染によるもので悪性化の心配はありませんが、悪性型の場合は、子宮頸がん、外陰がんなどの発生に関与している可能性が高いと考えられています。

●トリコモナス症

トリコモナスは、トリコモナス原虫の感染によって発症する性感染症です。
男性は尿道炎などがみられますが無症状であることが多く、女性では膣炎や外陰炎などがみられます。膣炎に伴うおりものには悪臭があり、かゆみも伴います。ほとんどは性行為で感染しますが、浴場、便器、タオル、手指などから感染する可能性があります。年齢的には30~40歳代の女性が多く、他のSTDより年齢層が高いことが特徴です。

●カンジダ

カンジダは、体内にも存在するカンジダという真菌によって発症します。もともと正常な皮膚粘膜に存在していて普段は何も害を及ぼさないのですが、膣の抵抗力が弱った時、例えば、妊娠、糖尿病、抗生物質やホルモン剤の使用後に増殖しやすい傾向にあります。
カンジダは女性が発症する確率が高く、灰白色の豆腐カスのようなおりものが出たり、外陰部が赤く腫れ、かゆみなどの症状が出ます。
また、カンジダ症は特に難治性の再発を繰り返す場合が多く、定められた期間治療することが大切です。

妊婦さんのカンジダ症は、妊娠中に治しておかないと、赤ちゃんのお尻のただれや、口の中に白いぶつぶつのできものが出来ることがありあます。

●エイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)

エイズは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が免疫細胞を破壊し、免疫不全を起こす病気です。
性行為だけでなく、母子感染や輸血による感染が知られています。
HIV感染2~4週間後に発熱、頭痛、咽頭痛、発疹、関節痛など風邪のような症状がみられることがありますが、これらの症状はすぐに消失します。
その後、無症状のまま数年から十数年の長い潜伏期間が続きます。この間、体内でウイルスが増殖し、免疫システムが徐々に破壊されていきます。
やがて免疫力の低下とともに発熱、体重減少、下痢などの様々な症状があらわれます。
さらに進行するとカリニ肺炎、結核のような様々な病原体による感染症や、カポジ肉腫などの悪性腫瘍を併発します。この段階をエイズといいます。

●B型肝炎

B型肝炎の感染経路は、血液を介しての感染で輸血、医療行為などが主ですが、人と人との密接な接触でも感染します。
B型急性肝炎の5~30%が、性行為によるとされています。病原体はB型肝炎ウイルスで、50~180日間の潜伏期の後、発熱、吐き気、全身倦怠感があらわれ、ごくまれに劇症肝炎(※1)を起こして死亡することがあります。こうした一部の劇症化例以外は、自然に治ります。
※1・劇症肝炎:幹細胞が広範囲に壊死し、肝不全を起こす重症肝炎。約8割が死亡する。

検査方法

疑われるSTDの種類によって若干の違いはありますが、問診を行い、おりものや性器の状態を診察したり、尿検査、血液検査、分泌物の検査などを行います。

治療方法

飲み薬や軟膏のほか、腟内に挿入する錠剤などもあります。ほとんどの性感染症は薬で治療できますが、中には処置が必要なものやHIVのように未だに完全な治療法が確立されていないものもあります。

性感染症(STD)を予防するには

「お互いをよく知り合った特定のパートナー以外との性交渉は慎む」「出血のおそれがある性行為をしない」「コンドームを使用する」といった基本的な知識を持っていれば、性感染症(STD)の感染はかなりの確率で防ぐことができます。また、B型肝炎には予防接種(ワクチン)があり、予防に役立てることができます。「傷の手当は自分でする」「他人の血のついたものに触れない」「歯ブラシやカミソリは共有しない」など、日常生活の注意を守ることが感染予防につながります。

  • 不特定の相手との性交渉は避ける
  • コンドームを正しく使用する
  • B型肝炎には予防接種(ワクチン)がある

性感染症(STD)にかかってしまったら

性感染症(STD)の対処方法として最も大切なのは、なるべく早く治療を行うことです。治療が遅れれば、それだけ症状が悪化していきます。
自分がSTDに感染していることがわかったら、パートナーも感染している可能性があります。このため、必ずパートナーにも検査を受けてもらうようにしましょう。
また、症状が治ったからといって勝手に治療を止めてしまうのは禁物です。

  • 早めに医療機関を受診する
  • パートナーも一緒に治療を